この連載ではQ&Aの形で胃粘膜下腫瘍について説明 しています。今回も粘膜下腫瘍の手術方法についてですが、胃内手術の限界についての解説です。今回もちょっと難し目ですが、じっくり読んでください。
【胃粘膜下腫瘍の治療:胃内手術の限界= 特に食道に伸びている場合】
A:何でも取れるというわけではありません。胃内手術にも限界があります。直径が4センチを超えるもの、あるいは腫瘍が胃の外側に発育している場合や、食道側に発育している場合です。
腫瘍が胃の外側に発育している場合は、胃の中からアプローチする胃内手術は不向きです。胃内手術では胃を膨らませてスペースを作り胃の内側から手術を行うのですが、外に発育している腫瘍では、切り取っている途中で胃に穴が開くので、胃がしぼみ、スペースがなくなってしまうからです。このようなケースでは、最近では後述のCLEAN-NET(クリーンネット)と呼ばれる新しい技術で切除を行うことが多いです。
腫瘍が食道側に大きく発育している場合は、やはり胃内手術では難しいことが多いです。
<図で胃内手術の限界を超えた腹部食道粘膜下腫瘍の手術を示す>
このような場合は、胃内手術ではなく、腹腔鏡で食道の外側からステイプラーを使わずに腫瘍をくりぬく方針で手術を行っています。この手術では食道粘膜を残して腫瘍だけをくりぬき(「核出」かくしゅつ)、そのあと状況に応じて、逆流防止手術を追加します。かなり技術力が要求され、やりがいがあります。ほかの病院では噴門側胃切除、あるいは胃全摘と説明を受けた患者様がほとんどです。臨床成績も大変良いので、これも国際雑誌に報告してあります。
Kanehira E at al. Minimally Invasive, Organ-preserving Surgery for Large Submucosal Tumors in the Abdominal Esophagus. Surg Laparosc Endosc Percutan Tech. 2017 Jun;27(3):189-193
腹部食道粘膜下腫瘍の実際の動画はこちらから
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私は胃内手術を始め、腹腔鏡での胃粘膜下腫瘍手術を1993年(金沢大学病院勤務時代)から積極的に行ってきました。2012年からはメディカルトピア草加病院で手術を行っていますが、2020年6月までの同病院での胃粘膜下腫瘍手術総数は400人を超えています。この手術数は世界でもトップレベルと思います。日本全国、あるいは海外からも、胃の温存を希望する患者様が手術を受けに来てくださいます。