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第5回 胃粘膜下腫瘍はどんな病気ですか?

 この連載ではQ&Aの形で胃粘膜下腫瘍(特にGIST)について患者様にもわかりやすい表現で説明 しています。今回は前回に引き続き、粘膜下腫瘍の手術方法について説明します。

Q8:私の胃粘膜下腫瘍の手術で胃は残りますか?

A:粘膜下腫瘍の手術は、病変が完全に取り切れたかどうかが大切です。それ以外の健康な胃は本来は取らなくても良いのです。胃癌と違って胃粘膜下腫瘍はリンパ節転移を伴うことは非常にまれなので、腫瘍のみを切り取る治療(局所切除といいます)が成り立ちます。

腫瘍表面ぎりぎりで切っていくと、腫瘍に切り込んだり腫瘍細胞が散らばってしまう危険を伴うだろうということで、通常は腫瘍ぎりぎりで切りません。腫瘍の周りに健康な胃を少しつけて(セーフティー・マージンと呼んでいます)切っていきます。

噴門(胃の入り口)と幽門(出口)は手術が難しい

例外的なのは、次の2か所に腫瘍が見つかった場合です。すなわち胃の入り口付近(噴門ふんもん)と出口付近(幽門ゆうもん)です。噴門や幽門に 発生した腫瘍では、一般的に局所切除は困難です。幽門に接していれば幽門側胃切除、噴門に接していれば噴門側胃切除または胃全摘出と説明を受けることはしばしばあります。局所切除ではないこれらの術式では、胃を筒状に切りとったあと、残った胃に十二指腸や小腸をつなぐ必要があります。 このような方法では術後に胃が小さくなったことによる症状に悩まされます。

このような嫌な場所(噴門または幽門)の腫瘍に対しても、私は特殊な術式を行い、なるべく胃を残すようにしています。これについてはまた後日説明いたしましょう。

Q9:胃粘膜下腫瘍の手術と胃がんの手術は違いますか?

A: ガイドラインでは直径5cm以下のものであれば腹腔鏡下手術の適応となると記載されています。5cm以上の腫瘍でも技術的には腹腔鏡下手術が可能な場合も少なくありませんが、おなかから取り出すときに結局大きな傷を作ることになり腹腔鏡下手術のメリットが薄れたり、あるいは手術中に腫瘍を崩してしまい、細胞がちらばる可能性もあるだろうということで、一般的には勧められていないのが現状です。

しかし世の中には5㎝以上の胃粘膜下腫瘍に腹腔鏡手術を行っても遜色なく施行できたとする報告もあります。私たちも、23人の患者で5㎝以上の腫瘍を腹腔鏡で切除し、良好な成績だったと世界に向け発信しました。(Surg Laparosc Endosc Percutan Tech. 2017 Dec;27(6):465-469.)実際、従来の開腹手術では見えにくい部分も、腹腔鏡ではとてもよく見えますので、腹腔鏡手術の方がメリットが多いと感じることが多々あります。この技術に関しては、腹腔鏡下手術に精通した外科医かどうかで差が出るところではないかと思っています。

私は胃内手術を始め、腹腔鏡での胃粘膜下腫瘍手術を1993年(金沢大学病院勤務時代)から積極的に行ってきました。2012年からはメディカルトピア草加病院で手術を行っていますが、2020年6月までの同病院での胃粘膜下腫瘍手術総数は400人を超えています。この手術数は世界でもトップレベルと思います。日本全国、あるいは海外からも、胃の温存を希望する患者様が手術を受けに来てくださいます。

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